退職代行のトラブル事例|類型別の原因と対処法を解説
最終更新: 2026-07-08
退職代行のトラブルは「珍しいこと」ではない
退職代行を使えば必ずスムーズに退職できるとは限りません。会社が退職を認めなかったり、本人に直接連絡が来たり、離職票が届かなかったりといったトラブルは、決して珍しいことではなく一定数発生しています。
ただし、トラブルの多くにはパターンがあり、事前に類型を知っておくことで回避・対処がしやすくなります。この記事では、退職代行利用時によくあるトラブルを類型別に整理し、それぞれの法的な考え方と対処法、トラブルになりやすい会社の特徴、トラブルに強い業者タイプについて解説します。
なお、より深刻な事例については退職代行の失敗事例まとめ、損害賠償を請求された場合の詳しい対応は損害賠償請求への対処法で解説していますので、あわせてご確認ください。
トラブル類型1: 会社が退職を認めない
どんな状況か
退職代行から退職の意思を伝えても、会社側が「本人と直接話さないと受け付けない」「引き継ぎが終わるまで退職は認められない」などと主張し、退職を受理しない姿勢を見せるケースです。中には退職届の受け取り自体を拒否する会社もあります。
法的な整理
民法627条により、雇用期間の定めのない労働者は退職の意思表示から2週間が経過すれば雇用契約を終了させることができます。これは会社の承諾の有無にかかわらず成立する権利であり、会社が「認めない」と主張しても、法的には退職通知から2週間後に契約は終了します。
会社が退職届の受領を拒んだ場合でも、退職代行業者が内容証明郵便で退職の意思表示を送付することで、意思表示が到達した事実を明確に残せます。到達した時点で退職の効力発生に向けたカウントが始まります。
対処法
労働組合型・弁護士型であれば、団体交渉権や代理権に基づき「退職は法的に有効である」ことを会社に対して明確に伝え、事務手続きを進めるよう働きかけられます。民間型は意思伝達のみのため、会社が強硬に拒否する姿勢を見せた場合は対応が難しくなることがあります。退職を拒否されそうな職場だと事前にわかっている場合は、労働組合型以上を選んでおくと安心です。
トラブル類型2: 本人へ直接連絡が来る
どんな状況か
退職代行を利用しているにもかかわらず、会社の上司や人事担当者から本人の携帯電話やSNSに直接連絡が来るケースです。「一度話がしたい」「退職代行を使うなんて非常識だ」といった内容が多く、精神的な負担になりやすいトラブルです。
法的な整理
退職代行業者から「今後の連絡は代理人・窓口を通してほしい」という意思表示がなされていれば、それを無視して本人に直接連絡を続けることは望ましい対応とはいえません。ただし、業者のタイプによっては会社に対して法的な強制力を持って連絡を止めさせることまではできない場合があります。
労働組合型・弁護士型であれば、団体交渉権や代理権を根拠に「本人への直接連絡をやめるように」と正式に申し入れることができます。民間型は交渉権がないため、会社が直接連絡をやめない場合に強く対応することは難しいのが実情です。
対処法
直接連絡が来た場合は、その場で対応せず「退職代行業者に連絡してください」とだけ伝えるか、応答せずに業者へ報告しましょう。業者経由で改めて「今後の連絡窓口は業者のみとする」旨を会社に伝えてもらうことで、多くの場合は連絡が収まります。着信拒否やSNSのブロックなど、自衛策を並行して取っておくことも有効です。
トラブル類型3: 私物・貸与物をめぐるトラブル
どんな状況か
会社に置いてきた私物が返却されない、逆に会社から貸与されたPCや制服、社員証などの返却を強く求められ対応に追われる、といったトラブルです。私物の返却時期が曖昧なまま放置され、退職後に何度もやりとりが発生するケースもあります。
法的な整理
会社の貸与物(PC・スマートフォン・制服・社員証・鍵など)は会社の資産であるため、退職後も速やかに返却する義務があります。返却しない場合、会社から返還請求や損害賠償請求の対象になり得ます。一方、私物については労働者に所有権があるため、会社が正当な理由なく返却を拒む・引き渡しを遅らせることは望ましくありません。
対処法
貸与物は退職代行業者を通じて郵送での返却を伝え、着払いや指定の送付先を確認した上でまとめて返送するのが一般的です。私物についても同様に、郵送での返却を業者経由で依頼できます。トラブルを避けるため、退職を決意した段階で私物を少しずつ持ち帰っておく、貸与物のリストを作成しておくといった事前準備が効果的です。
トラブル類型4: 離職票などの書類が届かない
どんな状況か
退職手続きが完了したはずなのに、離職票・源泉徴収票・雇用保険被保険者証といった重要書類がいつまでも届かないトラブルです。離職票がないと失業保険(基本手当)の申請ができず、転職活動や生活設計に支障が出ることもあります。
法的な整理
離職票の交付は、退職者からの請求があれば会社に発行義務があります(雇用保険法・雇用保険法施行規則に基づく手続き)。会社が意図的に発行を遅らせている場合、ハローワークを通じて会社に発行を促してもらうことが可能です。それでも会社が応じない場合、ハローワークが職権で手続きを進めることもできます。
対処法
まずは退職代行業者を通じて会社に書類発送の催促をしてもらいましょう。労働組合型・弁護士型は退職後のフォロー体制が整っていることが多く、書類が届かない場合の催促まで対応してくれるケースが一般的です。それでも改善しない場合は、最寄りのハローワークに離職票が届かない旨を相談すると、会社への指導や職権での手続きにつながります。
トラブル類型5: 悪質な退職代行業者によるトラブル
どんな状況か
会社側の問題ではなく、依頼した退職代行業者自体に問題があるケースです。「相談時に聞いていなかった追加費用を請求された」「連絡がほとんど取れなくなった」「非弁行為(弁護士資格がないのに未払い残業代の交渉などを行う)をしていた」といったトラブルが報告されています。
法的な整理
民間業者・労働組合が、報酬を得る目的で未払い残業代の請求や損害賠償交渉など「法律事件に関する法律事務」を行うことは、弁護士法72条により禁止されている非弁行為に該当する可能性があります。退職の意思を伝える「使者」としての役割を超えて、金銭交渉に踏み込んでいる業者には注意が必要です。
対処法
契約前に、運営会社の情報(会社名・所在地・労働組合の場合は労働局への届出の有無、弁護士法人の場合は所属弁護士名)が明記されているかを確認しましょう。極端に安い料金や、対応内容が曖昧な業者は避けるのが無難です。実際にトラブルに遭った場合は、最寄りの消費生活センター(消費者ホットライン188)や弁護士会の法律相談窓口に相談できます。
トラブルになりやすい会社の特徴
これまでの類型を踏まえると、以下のような特徴を持つ会社では退職代行利用時にトラブルが起きやすい傾向があります。
- 慢性的な人手不足で退職者を出したくない会社: 後任が見つからないことを理由に退職を引き延ばそうとする
- 経営者・上司のワンマン体質が強い会社: 退職を「裏切り」と捉え、感情的な反発が強くなりやすい
- 就業規則や退職手続きの整備が不十分な会社: 離職票の発行など事務手続きに慣れておらず、対応が遅れがちになる
- 過去にも退職者とトラブルになった経緯がある会社: 同様のパターンが繰り返される傾向がある
- 属人化した業務を任されているポジション: 引き継ぎを理由に強く引き止められやすい。詳しくは引き継ぎなしで退職代行を使う方法で解説しています
自分の勤務先がこうした特徴に当てはまると感じる場合は、対応力の高い業者タイプを選んでおくことがトラブル予防につながります。
トラブルに強い業者タイプ(交渉権の有無で選ぶ)
退職代行のトラブル対応力は、交渉権・代理権の有無によって大きく変わります。
民間型(交渉権なし)
会社への意思伝達のみが可能で、交渉はできません。会社が退職をすんなり受理し、貸与物の返却や書類発行もスムーズに進む見込みが高い場合は問題になりにくいですが、会社が強硬な姿勢を見せた場合には対応が難しくなります。
労働組合型(団体交渉権あり)
労働組合法に基づく団体交渉権を持つため、退職日の調整・有給消化・本人への直接連絡の停止などについて会社と交渉できます。金銭トラブル(未払い残業代の請求など)を除けば、多くのトラブル類型に対応可能です。費用相場は20,000〜29,000円程度で、料金と対応力のバランスがよいのが特徴です。退職代行SARABAは労働組合型として、会社側の強い引き止めや直接連絡のトラブルにも対応した実績があります。
弁護士型(法律事務の代理権あり)
弁護士法人であれば、未払い残業代の請求・損害賠償交渉・懲戒処分への対応など、法律事務全般を代理人として扱えます。会社が強く反発している、金銭トラブルの可能性がある、専門職で会社との対立が予想されるといった場合は弁護士型を選ぶのが最も安全です。費用相場は25,000〜80,000円程度とやや高めですが、トラブル対応力は最も高くなります。弁護士法人みやびは弁護士型として、トラブルが想定される退職案件に対応しています。
どのタイプを選ぶべきか迷う場合は、退職代行の選び方ガイドで自分の状況に合ったタイプの見極め方を詳しく解説していますので参考にしてください。
トラブルを未然に防ぐための事前準備
トラブルの多くは、退職を決意した時点でいくつかの準備をしておくことで防げます。
1. 会社の体質を踏まえて業者タイプを選ぶ 引き止めが強そうな会社、過去にトラブルの噂がある会社であれば、最初から労働組合型・弁護士型を選んでおきましょう。
2. 私物は少しずつ持ち帰っておく 退職を決めたら、私物を目立たないタイミングで少しずつ自宅に持ち帰っておくと、退職後のやりとりを減らせます。
3. 貸与物のリストを作成しておく 返却が必要な貸与物(PC・社員証・制服・鍵など)をリスト化しておくと、返却漏れやトラブルを防げます。
4. 離職票の送付先住所を業者に正確に伝える 引っ越し予定がある場合は特に、送付先の住所を明確に伝えておきましょう。
5. 契約前に業者の実績・体制を確認する 運営者情報、料金の内訳、返金保証の有無、退職後のフォロー体制(書類催促への対応など)を契約前に確認しておくことが、業者側のトラブルを避ける最も確実な方法です。
まとめ
退職代行利用時のトラブルには、会社が退職を認めない、本人へ直接連絡が来る、私物・貸与物のやりとりでもめる、離職票が届かない、悪質な業者に依頼してしまう、といった代表的な類型があります。それぞれに法的な整理と対処法があり、事前に知っておくことで多くは回避・軽減できます。
トラブルへの対応力は業者タイプによって大きく異なります。会社が引き止めや直接連絡などで強く反発しそうな場合は労働組合型、金銭トラブルや懲戒処分の可能性がある場合は弁護士型を選ぶことで、トラブル発生時にも交渉権・代理権を根拠に対応してもらえます。
まずは自分の状況を整理し、無料相談でトラブルの可能性を業者に伝えた上で、対応できるタイプの退職代行を選びましょう。
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- 退職代行の失敗事例まとめ — トラブルが深刻化した具体的なパターン
- 損害賠償請求への対処法 — 会社から損害賠償を持ち出された場合の法的整理
- 引き継ぎなしで退職代行を使う方法 — 引き継ぎを理由にした引き止めへの対処
- 退職代行の選び方ガイド — 自分に合った業者タイプの見極め方
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