診断書を会社に提出する義務はある?必要なケースと正しい対応を解説
最終更新: 2026-06-23
「診断書、会社に出さないといけないの?」という疑問に答えます
体調を崩して欠勤した翌日、上司から「診断書を持ってきてください」と言われた。あるいは、もう限界で退職したいと思っているのに、「診断書がないと手続きできない」と言われてどうすればいいかわからない——そんな状況で、この記事を読んでいる方も多いのではないでしょうか。
「会社から求められたら提出しなければならない」と思い込んでいる方も少なくありませんが、実は診断書の提出については、法律上の義務と任意で求められるケースがはっきり区別されています。
この記事では、診断書を会社に提出する義務があるのかどうかという核心的な問いに答えながら、休職・傷病手当金・退職などの場面ごとに診断書をどう活用すべきか、また体調不良で退職を言い出せない場合の対処法まで、実務的な観点から解説します。
法律上、診断書の提出義務はあるのか
結論から言えば、診断書の提出を従業員に一般的に義務づける法律は存在しません。
労働基準法、健康保険法、労働契約法のいずれにも、「欠勤や病気の際に診断書を会社に提出しなければならない」という規定はありません。これは多くの方が誤解しているポイントです。
ただし、就業規則に明記されている場合は話が変わります。
就業規則は、労働契約法第7条により労働契約の内容となります。つまり、就業規則に「○日以上の欠勤・休職には医師の診断書を提出すること」と定められていれば、従業員にはその規定を守る義務が生じる可能性があります。
したがって、まず確認すべきは自社の就業規則の内容です。
提出が必要なケースと必要でないケース
提出が必要になるケース
| 状況 | 根拠 |
|---|---|
| 就業規則に診断書提出が明記されている | 労働契約法第7条(就業規則の効力) |
| 連続して3日以上の欠勤・病気休暇を取得する場合 | 会社が業務上の必要性を主張しやすい |
| 休職を申請する・休職から復職する場面 | 安全配慮義務(労働契約法第5条)の観点 |
| 傷病手当金・労災補償を申請する際 | 行政・保険手続き上の要件 |
| 長期療養後に業務復帰の可否を判断する場合 | 復職判定のエビデンスとして |
提出しなくてよいケース
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| 就業規則に提出規定がない | 法的根拠がない |
| 1〜2日程度の短期欠勤 | 業務上の必要性が認められにくい |
| 「念のため」「確認のため」という漠然とした理由 | 個人情報・プライバシーの侵害にあたる可能性 |
| 病名や詳細な診断内容の開示を求められる場合 | 要配慮個人情報(個人情報保護法第2条第3項) |
会社が診断書を要求できる正当な理由とは
会社が診断書の提出を求めることが認められるのは、主に以下の理由がある場合です。
1. 労務管理上の必要性
長期間の欠勤が続く場合、会社は人員配置や業務の継続性を管理する必要があります。従業員の体調と復帰見込みを把握するために、医療的な根拠を求めることは一定の合理性があります。
2. 安全配慮義務の履行
労働契約法第5条により、使用者(会社)は労働者が安全に働けるよう配慮する義務を負います。病気・けがからの復職に際して就労可能かどうか確認するために診断書を求めることは、この義務の履行として認められます。
3. 労災・傷病手当金の手続き支援
労働者が傷病手当金や労災補償を申請する場合、医師の証明が必要です。会社が手続き上の確認を行うために診断書の内容を求めることがあります。
一方、単に「サボりではないことを証明させる」「プレッシャーをかける」という目的で診断書を求めることは、正当な業務上の指示とは言えません。
診断書で自分を守る:活用すべき3つの場面
診断書は、「会社に出さなければならないもの」ではなく、自分の権利を守るために戦略的に活用するものと捉えるとよいでしょう。
場面1:休職を認めてもらうとき
体調が悪化して働けない状態であっても、口頭で「休みたい」と伝えるだけでは会社に休職を認めてもらえないことがあります。主治医に「就業困難である」旨の診断書(休職診断書)を発行してもらうことで、医学的根拠に基づいた休職申請ができます。
休職が認められることで、傷病手当金の受給、雇用保険への影響の最小化、解雇リスクの低減といった実質的なメリットが生まれます。
場面2:傷病手当金を申請するとき
健康保険の傷病手当金は、業務外の病気やけがで働けない場合に給与の約3分の2相当を最長1年6ヶ月受給できる制度です。申請にあたっては、医師による就労不能の証明が欠かせません。
傷病手当金の申請書には医師記載欄があり、これが実質的な診断書の役割を担います。退職後も受給を継続したい場合は、退職日の設定が重要です。詳しくは傷病手当金と失業給付の受給ガイドをご参照ください。
場面3:退職理由を正当に証明するとき
体調不良を理由に退職する場合、診断書があることで「やむを得ない事情による退職」として扱われやすくなります。これは雇用保険の給付において「特定理由離職者」に該当する可能性を高め、給付制限なしで失業給付を受けられるケースがあります。
また、退職交渉の場面で診断書があることで、会社側からの「もう少し頑張れ」「引き継ぎが終わってから」といった引き止めに対し、医師の判断として就労継続が困難であることを客観的に示せます。
病名の開示義務はない:プライバシー保護の重要ポイント
会社から診断書の提出を求められたとき、病名まで開示しなければならないのかという不安を感じる方は少なくありません。
病名・詳細な診断内容は「要配慮個人情報」として、個人情報保護法で保護されています。
つまり、会社に診断書を提出する場合も、「療養が必要な状態である」という事実を示せば十分であり、具体的な病名や診断の詳細まで開示する義務は原則としてありません。
主治医に依頼する際は、以下のような表現で記載してもらうことを相談できます。
- 「精神的疾患により療養を要する」
- 「抑うつ状態にて就業困難な状態にある」
- 「身体的疾患による加療が必要な状態」
「うつ病」「適応障害」「パニック障害」といった具体的な病名を伏せた形での診断書作成は、医師との相談次第で対応してもらえる場合があります。会社が「病名が入っていないと受け付けない」と言っても、それに応じる法的な根拠はありません。
退職に診断書は必要か
「退職するには診断書が必要」という誤解が広まっていますが、これは法律上正しくありません。
民法第627条第1項により、期間の定めのない雇用契約(正社員の多くが該当)は、従業員がいつでも退職を申し出ることができ、申し出から2週間後に退職の効力が発生します。 会社の承認も、診断書の提出も、この法律上の退職効力には影響しません。
会社が「診断書がなければ退職を受理しない」「診断書を出すまで手続きは進められない」と言っても、それは法的根拠のない引き止めです。
ただし、診断書があることで以下の実質的なメリットが生まれる場合があります。
- 退職理由が「やむを得ない事情」として認定されやすくなる(雇用保険の特定理由離職者該当の可能性)
- 会社側の引き止めに対して医師の判断を根拠に対抗できる
- 傷病手当金の申請・継続受給の証拠となる
診断書は退職の「条件」ではなく、退職プロセスを有利に進めるための「ツール」として捉えるとよいでしょう。
会社から無理な提出要求を受けた場合の詳しい対処法は、会社に診断書を出せと言われたら?もあわせてご覧ください。
体調不良で「退職を言い出せない」ときは退職代行が有効
体調を崩している状態で、直接上司に「辞めます」と伝えることは、想像以上に心身への負担が大きいものです。「怒鳴られるかもしれない」「引き止められる」「電話するだけで吐き気がする」という状態では、退職の意思を伝えること自体が困難です。
こうした状況で特に有効なのが退職代行サービスです。
退職代行を使うことで、次のことが可能になります。
- 本人が会社に一切連絡することなく退職の意思を伝えられる
- 有給消化・退職日設定を代わりに交渉してもらえる(労働組合型・弁護士型)
- 傷病手当金の受給継続に有利な退職日を設定してもらえる
- LINEや電話で24時間申し込めるため、ベッドから出られない状態でも手続きできる
体調不良での退職に退職代行が特に有効なケースは以下のような状況です。
- メンタル疾患(うつ病・適応障害など)で会社に連絡する気力がない
- ハラスメントがあり、会社の人間と話すこと自体がトラウマになっている
- 休職中に「もう戻れない」と判断し、そのまま退職したい
- 「診断書を出してから」と引き止められ続けている
退職代行のタイプ別・体調不良ケースへの対応力
体調不良が絡む退職では、単に「退職の意思を伝える」以上の対応が必要になることが多いため、退職代行のタイプ選びが重要です。
労働組合型を選ぶべきケース
有給消化の交渉、退職日の設定(傷病手当金の継続受給を見据えた日程調整)まで対応したい場合は、団体交渉権を持つ労働組合型が適しています。料金は20,000〜25,000円程度が相場です。
弁護士型を選ぶべきケース
パワハラ・ハラスメントによるメンタル不調で、慰謝料請求や労災申請も視野に入れている場合は弁護士型を選んでください。費用は25,000〜80,000円程度ですが、金銭的な請求まで対応できます。
民間型の注意点
民間型は費用が抑えられますが、有給消化交渉や退職日の設定交渉ができないケースがあります。傷病手当金の継続受給を考えている場合は、退職日調整の交渉力がある労働組合型または弁護士型を選んでください。
まとめ:診断書と退職について知っておくべきこと
- 診断書の提出を義務づける法律は存在しない。提出義務が生じるのは就業規則に規定がある場合のみ
- 病名などの詳細な健康情報は要配慮個人情報であり、会社への開示義務はない
- 診断書は「休職の証明」「傷病手当金の申請」「退職理由の証明」として自分を守るために活用できる
- 退職に診断書は法律上不要。民法第627条により2週間前の申告で退職できる
- 体調不良で直接退職を伝えられない場合は、退職代行サービスの活用が現実的な選択肢
体調が限界の状態で、退職の手続きを一人で抱え込む必要はありません。
自分の状況に合った退職代行サービスを選ぶことで、会社との直接交渉ゼロで退職を完了できます。まずは無料相談から始めてみてください。
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