残業代の平均はいくら?業種別データ・計算方法・未払いの対処法を解説
最終更新: 2026-06-23
残業代の平均を知ることが、未払いに気づく第一歩
「残業しているのに手当が少ない気がする」と感じながらも、周囲の状況がわからないため声を上げられずにいる方は少なくありません。残業代の平均水準を正確に知ることは、自分が適切な対価を受け取っているかを判断するうえで重要な出発点になります。
このガイドでは、日本における残業代の平均額と業種別データ、法定の計算方法、そして未払い残業代が発覚した場合の対処法を順を追って解説します。
日本の残業代(所定外給与)の平均
厚生労働省が毎月公表している「毎月勤労統計調査」によると、一般労働者の所定外給与(時間外・休日・深夜労働に対する賃金)の平均は月約2万円前後で推移しています。
月の所定外労働時間の平均はおおむね10〜15時間程度ですが、これは企業規模・業種・職種によって大きく異なります。実態として、長時間残業が常態化している職場では月30〜50時間を超えるケースもあり、その分の手当が支払われていない場合、年間で数十万円単位の未払いが生じていることになります。
業種別の残業時間・残業代の目安
以下は、主要業種における残業の実態を概観したものです。
所定外労働時間が長い傾向がある業種
- 建設業:月平均15〜20時間程度。工期や現場の都合による突発的な長時間労働も多い。
- 情報通信業:月平均15〜25時間程度。プロジェクト納期前後に集中する傾向がある。
- 運輸・郵便業:月平均15〜20時間程度。2024年問題(時間外労働上限規制)以降は改善傾向にあるが、依然として長時間になりやすい。
- 卸売・小売業:月平均10〜18時間程度。閑散期と繁忙期の差が大きい。
所定外労働時間が比較的短い傾向がある業種
- 医療・福祉:月平均10〜15時間程度。ただし夜勤や呼び出しが多い職種では深夜割増が加算される。
- 宿泊・飲食サービス業:月平均8〜15時間程度。シフト制の場合は固定時間外として管理されないケースも。
- 教育・学習支援業:月平均8〜12時間程度。いわゆる「部活動問題」など記録されない残業が課題になっている。
これらはあくまで業種全体の傾向であり、個々の企業・職場によって実態は大きく異なります。自分の残業時間が業界水準と比べてどうかを確認する際の参考としてください。
残業代の法定計算方法
残業代の計算は労働基準法第37条に定められており、単純な「時給×時間」ではなく割増率が適用されます。正確な計算方法を知ることで、支払われた残業代が正しいかどうかを自分で検証できます。
1時間あたりの基礎賃金の算出
月給制の場合、まず1時間あたりの賃金を以下の方法で計算します。
1時間あたりの賃金 = 月給 ÷ 月の所定労働時間
月の所定労働時間は会社の就業規則によって異なりますが、一般的には160〜173時間程度です。たとえば月給25万円、月所定労働時間170時間であれば、1時間あたりの賃金は約1,471円になります。
なお、月給に含まれる家族手当・通勤手当・住宅手当・臨時に支払われる賃金などは、原則として基礎賃金の計算から除外できます(労働基準法施行規則第21条)。ただし「職務手当」や「役職手当」のように労働の対償として支払われる手当は含める必要があります。
割増率の適用ルール
時間外労働に対する割増賃金の率は以下のとおりです。
法定時間外労働(1日8時間・週40時間超):1.25倍
法定労働時間を超えた時間外労働には、通常の25%増の賃金を支払う義務があります。「所定労働時間」が1日7時間の場合、7〜8時間の部分は法定内残業のため1.0倍、8時間を超えた部分から1.25倍になります。
月60時間超の法定時間外労働:1.5倍
2023年4月から中小企業にも適用が拡大され、一カ月の法定時間外労働が60時間を超えた部分には50%以上の割増賃金が義務付けられました。
深夜労働(22時〜翌5時):0.25加算
深夜時間帯の労働には25%の割増が加算されます。深夜に時間外労働が重なった場合は1.25+0.25=1.5倍、深夜に月60時間超の時間外労働が重なった場合は1.5+0.25=1.75倍の割増率が適用されます。
休日労働(法定休日:週1日):1.35倍
法定休日(週に1日与えなければならない休日)に出勤した場合は35%増しになります。深夜と重なる場合は1.35+0.25=1.60倍です。
計算例
月給25万円、月所定労働時間170時間、法定時間外労働が月20時間の場合。
- 1時間あたりの賃金:250,000円 ÷ 170時間 = 約1,471円
- 時間外割増賃金:1,471円 × 1.25 × 20時間 = 約36,765円
支給されている時間外手当がこの金額を大幅に下回っている場合、差額が未払い残業代として発生している可能性があります。
未払い残業代が発生しやすいパターン
実際に問題になるのは、次のようなケースです。
サービス残業の常態化:「残業申請するな」「タイムカードを切ってから仕事をしろ」という指示により、記録されない労働時間が生じている状態。
みなし残業の過信:固定残業代として月30時間分を基本給に含めている場合でも、実際の残業が30時間を超えれば差額の支払いが必要です。「固定残業代があるから残業代はゼロ」は誤りです。
管理職への誤った適用:労働基準法上の「管理監督者」に当たらない「名ばかり管理職」には、時間外労働の割増賃金規定が適用されます。肩書きが「マネージャー」や「主任」であっても、実態として部下の採用・解雇・給与決定に関与していなければ管理監督者とは認められない可能性が高いです。
在宅勤務・テレワークの未記録:コロナ禍以降に普及したテレワークでは、始業・終業時刻の記録が曖昧になりやすく、時間外労働が把握・申告されないまま放置されるケースがあります。
未払い残業代の請求方法と手順
未払い残業代に気づいたら、以下の手順で対処します。
ステップ1:証拠を集める
労働時間の証拠として有効なものには以下があります。
- 業務メール・チャットツール(Slack、Teams等)の送受信記録
- 業務システムへのログイン・ログオフの履歴
- 入退室記録・防犯カメラの映像(会社に開示請求が可能)
- 自分でつけた日記・メモ・手帳の記録
- 交通系ICカードの乗降記録
証拠は会社に請求する前に保全することが重要です。退職後はアクセスできなくなるものが多いため、在職中のうちにスクリーンショットや印刷で保存してください。
ステップ2:差額を計算する
給与明細に記載された時間外手当の額と、実際の残業時間から計算した法定残業代を比較します。差額が存在する場合、その金額が請求の対象になります。
ステップ3:会社に請求する
差額の支払いを会社に求める方法は主に三つあります。
内容証明郵便による請求:弁護士を通じて、または自分で内容証明郵便を作成し、会社に未払い残業代の支払いを求めます。書面で記録が残るため、時効の中断(更新)にも有効です。
労働基準監督署への申告:会社の所在地を管轄する労働基準監督署に申告すると、監督官が調査に入ることがあります。費用はかかりませんが、監督署が直接回収してくれるわけではありません。
労働審判・民事訴訟:弁護士を通じた法的手続きです。60万円以下の少額訴訟や労働審判(原則3回以内で解決を図る手続き)を活用することで、比較的短期間で解決できるケースもあります。
消滅時効(3年)に注意
2020年4月1日以降に発生した賃金の消滅時効は3年です(改正労働基準法第115条)。「退職してから落ち着いたら考えよう」と後回しにしているうちに、時効で消滅してしまう可能性があります。退職を決意したタイミングで、未払い残業代の回収も並行して動き出すことが重要です。
なお、内容証明郵便による請求や労働審判の申立てを行うと、時効の完成猶予(中断)が認められます。弁護士に相談のうえ、適切なタイミングで手続きを行ってください。
退職と同時に未払い残業代を回収するなら弁護士型退職代行
未払い残業代の問題を抱えたまま退職する場合、弁護士型退職代行への依頼が最も効率的な選択肢です。
通常の退職代行(民間型・労働組合型)は、退職の意思を会社に伝えることや有給消化の交渉までは対応できますが、残業代など金銭の法的請求を代理することはできません。弁護士法に基づく交渉・請求は、弁護士資格を持つ者にのみ認められているためです。
弁護士型退職代行に依頼すると、以下が一括して対応できます。
- 会社への退職意思の通知と退職手続きの代行
- 有給休暇の消化交渉
- 未払い残業代の計算・証拠整理のアドバイス
- 会社への請求書の送付・交渉の代理
- 必要に応じた労働審判・訴訟手続き
在職中に会社との関係悪化を避けながら退職と残業代回収を同時に進められる点が最大のメリットです。費用は着手金25,000〜80,000円程度で、多くの事務所が回収成功時の成功報酬型(回収額の20〜30%)を採用しています。
弁護士型退職代行の具体的な選び方については退職代行の選び方ガイドを、未払い残業代の請求を退職代行と組み合わせる方法の詳細は未払い残業代を請求しながら退職する方法もあわせてご覧ください。
まとめ:残業代の「平均」を知り、適切な対価を受け取る
日本の残業代の平均は月2万円前後ですが、これは業種や職場によって大きく異なります。重要なのは業界平均との比較ではなく、自分が労働基準法に基づく正当な割増賃金を受け取っているかどうかです。
法定の計算式と実際の支給額を照合し、差額が見つかった場合は消滅時効(3年)の前に行動してください。退職を考えているなら、弁護士型退職代行を通じて退職と未払い残業代の回収を同時に進めることが、最も確実で負担の少ない方法です。
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